はじめに
DaVinci Resolveでグレーディングする過程で市販の3D LUTを使用する場合もあると思います。
以前ブラックマジックデザイン社のセミナーでトーンカーブを使用したオリジナルLUTの作り方を教えてもらったことがあり、それからグレーディングで多用するようになりました。
今回ブラックマジックデザイン社より許可を得ましたので紹介させていただきます。
LUTを自作する理由
市販の3D LUTは8bitのものが多く、例えばURSA mini 4.6Kの12bitのRAWで撮影したデータに適用すると、せっかくの高画質が劣化したりノイズが発生します。そこで撮影データに近い高品質のLUTを作ることで好みのルックを実現しながら画質の劣化を最小限に留めたい、というのがLUTを自作する理由です。
ただ、この記事の方法で作成するLUTは完全な3D LUTではありません。あくまでも色味の傾向を好みのLUTに近づけるまでが限界になります。
それではやってみましょう。
オリジナルLUTの作り方
Chapter 1 準備
▼まず最初に撮影データを読み込む時と同じ設定でプロジェクトを作ります。
次に「エディット」ページに進み、「ツールボックス」→「ジェネレーター」→「グレースケール」を選択し、タイムラインにドラッグします。
▼同じ要領で、「SMTPE CB」のカラーバーも追加します。
▼次に2つのクリップを一つずつ右クリックし「新規複合クリップ」に変換します。ここでの注意は2つのクリップをまとめて変換しないでください。必ず一つずつ変換してください。
▼「メディア」ページに戻り、ここで作成するLUTの検証をするクリップをいくつかメディアプールに追加しておきます。
▼「エディット」ページに移動して、タイムラインのグレースケールとカラーバーの後ろに追加します。
▼以上で準備が整いました。「カラー」ページにグレースケールとカラーバー、任意のクリップが並んでいます。
Chapter 2 手本とするLUTを選ぶ
▼次に手本とするLUTを選びます。普段使用している好みのLUTにします。今回は「ビデオサロン2018年1月号」で特集された、ドキュメンタリーショート「おぶせびと」のグレーディングで実際に使用した「OSIRIS M31」を使用してみます。以下のサイトから無料でダウンロードできます。
https://www.colorgradingcentral.com/osiris/#
▼「OSIRIS M31」を使用する場合はLUTをダウンロードしてインストールします。他の好みのLUTがある場合はをそれを使って手本にします。それではグレースケールのクリップにLUTを適用してみましょう。
Chapter 3 トーンカーブでRGB値を合わせる
▼この段階でプレビューを右クリックして「スチルを保存」します。
▼その後に、ノードを右クリックして「ノードグレードをリセット」します。これでLUT適用前の状態に戻ります。
▼次に「表示」→「参照ワイプを表示」か、保存したスチルをダブルクリックして「PLAY STILL」モードにします。
▼平行に比較する表示になっている場合は画像のように垂直方向に比較ができるようにします。
▼DaVinci Resolveの画面下の「キーフレーム」の表示を最大にします。
▼表示を「キーフレーム」から「スコープ」に変更し、「波形」を表示します。
▼ノードを選択し、「ノード」→「スプリッター/コンバイナーノードを追加」をします。これでRGBチャンネルを別々に調整できるようになります。
▼スプリッターノードは上から順にR→G→Bなので「R」から調整していきます。一番上のノードをダブルクリックしてアクティブにし、波形も「R」チャンネルのみ表示します。こうすることで、プレビューの上半分のLUTが適用された画像と、下半分のLUTが適用されていないグレースケールの差が分かります。
S字カーブを描いているのが「PLAY STILL」している上半分のLUTの波形です。直線の波形は下半分のLUTが適用されていないグレースケールの波形です。
▼トーンカーブを使って下半分の「R」チャンネルの直線状態の波形を、上半分のLUTが適用されたS字カーブに合わせていきます。プレビュー画面を見るとこの調整によって下半分のグレースケールの色味が変化したのが分かります。
▼同じ要領で真ん中の「G」ノードも調整します。
▼最後に一番下の「B」ノードを調整します。ここまで終わると上半分と下半分がほとんど同じに見えるまで近づきました。
▼「表示」→「参照ワイプを表示」で「PLAY STILL」モードを解除し、クリップの並びを表示し、調整したクリップを右クリックして「3D LUTを生成(CUBE)」を選択します。
▼今回はLUTフォルダの中に「180111」というフォルダを作り「M31_Original」という名前を付けました。これで3D LUTにリストの中に表示されるようになります。
Chapter 4 検証してみよう
▼さて、オリジナルLUTが出来たところで、市販の「M31」とどれくらい違うか、検証してみましょう。まずは市販の「M31」をカラーバーに適用してみます。全体的にカラーバーの色味がパステルカラーのような感じに変化します。さすが市販の3D LUT、フィルム感が出ているように思います。
▼次に先ほど作成した「M31_Original」を適用してみます。グレースケールでは「M31」とほとんど同じに見えた「M31_Original」ですが、カラーバーに適用するとかなり違うことが分かります。3D LUTとはRGB三原色の値をある決まった配列と補正式に従い数値を変換しているので、今回のようなグレースケールをトーンカーブのみで調整しただけでは限界があります。
ただ、全く使えないかというと、色味の傾向としては再現ができるので、グレーディングの手段として有効に使っています。画像劣化の少なさは特筆すべき点です。
▼例としてRAWで撮影した「おぶせびと」の火渡りの神事のクリップで検証してみましょう。LUT適用前の撮影データはこんな感じです。
▼市販の「M31」LUTを適用してみます。こんな感じになります。
▼等倍で確認すると白い装束の部分にクロマノイズが結構出ているのが分かります。
▼次に今回作成した「M31_Original」を適用してみます。「M31」と比べるとだいぶ色味が違う印象ですが、ヒストグラムを見るとGチャンネル、Bチャンネルは結構似ているのが分かります。Rチャンネルを調整すれば近づけそうです。
▼等倍表示してみると、クロマノイズが発生していないのが分かります。
▼それではこの「M31_Original」LUTを使って実際にグレーディングしてみましょう。
私のグレーディング方法は「ビデオサロン2018年1月号」に詳しく掲載されているのでそちらをご覧ください。2月15日発売の「DaVinci Resolve カラーグレーディングBOOK」には私を含め7人のクリエイターによるグレーディング事例が掲載されてますので、そちらもご覧いただければ思います。
▼最終的にはこんな仕上りになりました。火渡りの神事の重厚さが表現できたのではないでしょうか。
おわりに
今回の方法でオリジナルLUTを作っていくと、手本にするLUTによっては思いの外使えるLUTに仕上がることがあるので、是非色々と試してみてください。私もグレーディングでオリジナルLUTを多用しています。きっとグレーディングするのが楽しくなりますよ。