渋谷アップリンク、満員御礼!
少し時間が経ってしまいましたが、9月13日(火)に渋谷のミニシアターアップリンクで「おだやか家 ODAYAKA-YA」のイベント上映を行ないました。海外の映画祭では受賞を重ねてハリウッドの映画祭のレッドカーペットに正式招待されるまでになりましたが、日本国内の反響はまだ知らないので緊張していました。
実は、お恥ずかしながら今までミニシアターというものを経験したことがなく、アップリンクで初めて観る映画が自分の作品という、何とも申し訳ない気持ちでした。。。
当日の模様をCAREER HACKの田中嘉人さんがブログ記事にしてくださいました。さすが本職のライターさんの手にかかると、こんなに臨場感のある文章になるのか、という素晴らしい内容です。是非御覧ください。
【ハリウッドが惚れた男】新進気鋭の映像作家 初監督作品の上映会をレポート!
今回の作品はBlackmagic Cinema Cameraというデジタルシネマカメラで撮影し、DaVinci Resolveというソフトでグレーディングをしています。いずれもハリウッドの現場で実際に使用されている機材になります。映画用の機材を使い、映画の手法を取り入れた撮影方法で、ドキュメンタリーなのですがストーリーを感じさせる展開にこだわって制作しました。
なので、アップリンクという本物の劇場で上映できることになって本当に嬉しかったです。アップリンクという名前だけは有名なので知っている程度の僕が、無謀にも「上映させてください」といきなりメールを送ったことから始まりましたが、その後大変お世話になるKさんが丁寧に対応してくだり、15分という短編なので通常の帯上映は難しいということで、イベント上映を提案してくださいました。
もちろん、アップリンクという由緒ある劇場なので、審査を通らないと上映できません。企画会議に上げていただき、審査していただいた結果、イベント上映できることになりました。Kさんには感謝の言葉が尽きません。
さて、審査に通った後、上映用のデータを作成することになったのですが、アップリンクには本格的なデジタル上映システムが完備されているので、DCPでの上映が可能です。DCPとは(Digital Cinema Package)の略で、現在フィルムに代わる映画作品のフォーマットとして世界各国で普及しています。国際的な標準規格なので、世界各地の映画祭や日本全国の映画館などで上映することが可能になります。つまりDCPを作れば近所のシネコンでも、ハリウッドの劇場に持っていっても上映できるということです。
そして、DCPは従来の35mmフィルムの代替として大型スクリーンに映写するために開発された2K、4Kの低圧縮・高画質の業務用規格のデータファイルの形式のため、民生向けディスクの規格であるBlu-rayとはクオリティのレベルが違います。
ということで、上映用のデータはDCPで作ることに決めました。初めてのチャレンジだったのですが、クランクアップしてからずっと映画クオリティで撮影・編集してきたので、最終形態である上映データも映画クオリティで仕上げることにこだわってみました。
実はこれ、個人レベルでは割りとハードルが高く、DPC作成を業務として行なっている会社も普通にあるくらいなのですが、この時はまだそこまで詳しく知らず、「アップリンクではDCPで上映する」と宣言してしまい、後々大変な思いをすることになります。そのことはまた後日詳しく書きたいと思います。
実際のDCP作成は、何度か超えられそうにないハードルがあって「Blu-rayでいいか、、、」と諦めかけたのですが、色々な方に助けていただいて、何とか上映の二日前に仕上げて納品することができました。DCPデータはハードディスクで納品して、劇場のシネマ・サーバーにDCPデータをあらかじめインジェスト(取り込み)してもらいます。このインジェストがうまくいかず、ハードディスクを2回も届けることになりアップリンクのスタッフの皆様には何度も検証を行っていただくご迷惑をおかけしてしまいました。何とか無事インジェストが完了した後は、サーバー上でデータ・ファイルを再生しながら、DLPプロジェクターによって映写を行ないます。
上映会当日はスタッフは早めに到着して準備をしていたのですが、上映データを確認できる時間があり、自分の作品を初めて本物の劇場のスクリーンに映写して観ることができました。120インチのスクリーンに映し出された作品はとても綺麗な映像でした!
編集時に何度も見ているはずの映像なのですが、DCPデータになってスクリーンに映写された映像は、初めて観るような美しさでした。「こんなに綺麗な映像だったんだ。。。」と感動してしまいました。これほどのクオリティで観ていただけることになって本当に監督として幸せでした。今まで関わっていただいた方々に感謝の気持ちでいっぱいです。
そして、改めて思ったのはBlackmagic Cinema Camera(BMCC)のポテンシャルの高さです。劇場でご覧いただいた方は体感していただけたと思うのですが、非常に繊細かつ深みのある色彩でした。2.5Kという、4Kが主流になりつつあるカメラの中で控えめな性能に感じるかもしれませんが、実は解像度が高ければいいというわけではなく、1画素あたりにどれだけの情報量を記録できるか、のほうが大事です。その点BMCCは映画用をうたっているだけに、ダイナミックレンジも広く、いわゆる4Kのビデオカメラでは撮れない画を撮ることが出来ます。DCPデータになって120インチのスクリーンに映写しても解像度の不足は全く感じられず、おだやかな空気感を余すことなく伝える繊細な映像が映し出されていました。
普段使用しているカメラの本当のポテンシャルを確認できたことも収穫でした。最近、URSA mini 4.6Kというカメラにステップアップしたのですが、BMCCもまだまだ現役で闘えることを再確認できました。
上映会は58名というミニシアターのキャパの関係で、メディアや仕事関係の方、映像関係の方を中心に声をかけさせていただき、あっという間に満席になりました。自分の作品で人を呼べるのか、不安だったのでホッとしました。
当日は上映の他に、劇中の素晴らしい音楽を作っていただいた、コンポーザー・ギタリストの成川正憲さんと、「おだやか家」の主人でドラマーでもある島崎和志さんによるミニライブ、監督の私も登壇するトークセッションという内容でお送りしました。
本作品への音楽の役割は多大なものがあり、作品を何倍もグレードアップさせてくれたのは成川正憲さんによる音楽でした。何ていうんでしょう、もうこの曲以外は考えられないというような、むしろ音楽に合わせて映像を作りました、というようなものを作曲してくれました。ガットギター一本のシンプルな構成なのですが、とてもスケール感があり、決して映像を邪魔することなく、僕が映像を通して伝えたかったことを自然に増幅させてくれるような素晴らしい音楽の数々で、音楽単体でも十分に聴きごたえがあります。個人的に本気でサントラが欲しいです。
成川正憲さんの音楽は映像にすごくマッチするので、映像作家さんは是非音楽を依頼していただきたいと思います。facebookから問合せできます。
喋るのが下手なので映像で表現しているくらいなので、トークセッションではやっぱりうまく喋れませんでしたけど、ご来場いただいた皆様、本当にありがとうございました!映画を観ていただいた方から感想をいただきました。少しご紹介させていただきたいと思います。
映像が暖かく、ほんとうに穏やかな時間が流れていたと思いました。311は様々な形で多くの人の人生を変えたのですね。また、その後のトークショーも大変興味深く、みなさんそれぞれの想いが溢れ出てきて、それをありがたく受け取って帰りました。「穏やか」という感覚が外国にはないのですね。「切ない」も無いと聞いたことがあり、日本の文化や気質を説明するのに困ったことがありましたが。なんだかいろんな発見があり、ゆっくり反芻しているところです。たくさんの方に見てもらえたらいいなあと願っております。(TV朝日リポーター)
昨晩はとても楽しませていただきました。コンテンツのメッセージ性を、映像とBGMが存分に活かしている全体の構成の完成度がとても高いと思いました。それと、成川さんのギターとKazuさんのタブラのコラボ素晴らしかったです。今度、改めてお二人の音楽を聞いてみたいと思いました。(政府機関)
イベントは生演奏、映画、トークショーと、盛りだくさんでしたね。映画は土や空や人々の雰囲気がとてもよく伝わってきました。音楽もステキでした。(映像関係)
自分らしい生き方って、よく聞くけど、よく分からない。そんな時にヒントとなる作品だなぁと思った。心おだやかになるシンプルな暮らし。何かを足すのではなく引き算してみる。自然と対話するように生きる。
そんな環境に身を置くと、自分の中の自分らしさ、というか人間らしさみたいなものが刺激されるんじゃないかな。(と、自分は勝手に思ったけど、捉え方は人それぞれ違っていいと思う)(ライター)
おだやか家のテーマは「穏やか」、でもそれを求める背景には「波風」があったと思うのです。波風に耐えている方には、是非観ていただきたい内容でした。(地方創生関係)
全編を観て、そこにはなんだかとても懐かしくて、新しい、日本の景色がありました。相模湖にあるカズさんとはるさんの「おだやか家」には素直に、そしてシンプルに生きる人の在り方と暮らしがあって、そこに共鳴した人達のコミュニティがあり、今とこれからを生きていく知恵と豊かさと、おだやかで力強くも確かな愛に溢れています。そこから私もたくさんインスパイアされつつ自分自身とも向き合うような時間をいただいた気がします。(モデル)
3.11のあと、多くのひとが感じたように、島崎夫妻もそう感じた。動いた人、動かなかった人。そのどちらが正しかったとは言えないけれど、二人は相模湖の近くで自給自足の生活へシフトする。
田舎で農業をしながら暮らすことに憧れるひとは、一定数いるのではないかと思う。一方で、毎日株価の変動に一喜一憂するひとたちもいる。お金を儲けて消費し続ける???、3.11前となんら変わらない価値観を責めても仕方ない。ショートフィルム作品『おだやか家』に写し出されるのは、誰を責めることなく、“自分なりに感じながら生きていく”という、豊かな日々を静かに取り戻そうとしているひとたちのように思える。虫の声、光、風、穫れたての野菜、土のにおい……。さくっ、さくっと鍬(くわ)を土におろす音。いま、この広い世界のどこかで営まれている、ささやかだけれど決して揺るがないもの。さあ、そろそろ、おだやか家に帰ろうか。(温野まき)