DCPで上映してみよう(後編)
DCPで上映してみよう(前編)で無事DCPデータを作成することができました。この後はポータブルHDDにデータを格納してシアターに行くだけです。
だけなんですが、この超簡単に思えることがとてつもなく大変なんです。多分Mac環境が理由だと思うのですが、どうしてもうまくいかず、シアターに持ち込んだHDDが認識されませんでした。ほとんどDCPでの上映を諦めかけたほどでしたが、最終的には無事にDCPで上映ができましたので、この経験を忘れないうちに書いておきたかったのも「後編」を書いた大きな理由の一つです。
具体的に何が大変だったかというと、アップリンク渋谷のシステムにDCPデータをインジェストする際、HDDにデータを格納して持込むのですが、このHDDのフォーマット形式が[ext3形式]というMacユーザーには馴染みのないフォーマット形式なんです。しかもMacのディスクユーティリティでもフォーマットできない形式です。
では一体どうすればいいのかというと、簡単に書くとこんな感じです。
- USBフラッシュメモリーにLinux OSをインストールする
- USBフラッシュメモリーから起動して、MacをLinux化する
- Mac上で動くLinuxでフォーマットソフトを起動する
- フォーマットソフトでポータブルHDDをext3形式にフォーマットする
- MXFデータをポータブルHDDにコピーする
文字で書くと簡単な感じがしますが、それはそれは大変でした。馴染みのないワードが出てきて戸惑いますが、順番にやっていけば可能です。
※尚、これから記載する方法を試したことによるいかなる不具合にも責任を取ることできませんので、あくまでも自己責任で行なうようにしてください。
【Chapter 7:USBフラッシュメモリをフォーマットする】
まず16GB以上のUSBフラッシュメモリを用意してください。私はTranscendのJetFlashシリーズのUSB3.0のモデルを購入しました。このUSBを「FAT形式」にフォーマットします。
ディスクユーティリティを起動し、フォーマットにMS-DOS(FAT)を選択し、任意の名前を付けます。この時、名前はすべて大文字になります。次にターミナルを起動します。
ターミナルで、
diskutil list
と入力してキーボードの「Enter」を押します。
そうすると、Macに接続されたHDDのリストが表示されます。USBフラッシュの名前と容量からdiskナンバーを確認します。今回の場合だと「disk10」ということが分かりました。この「disk10」を忘れずにメモっておきます。
【Chapter 8:Ubuntu USBブートを作成する】
下記のリンクをクリックして「Ubuntu」を入手します。「Ubuntu」とはLinuxディストリビューションということしか私には分かりません。多分Linuxを初心者にも使いやすくしたインターフェースなんじゃないか、というくらいの理解しかないです。
ページが表示されたら「日本語Remixイメージのダウンロード」をクリックします。
続いてダウンロードページが表示されるので、最新版の「ubuntu-ja-16.04-desktop-amd64.iso(ISOイメージ)」をクリックします。(2017年5月現在)
ダウンロードした「ubuntu-ja-16.04-desktop-amd64.iso」はデスクトップに移動しておきます。
次に、USBフラッシュに「Ubuntu」をインストールするためのツールである、「UNetbootin」を下記のリンクよりダウンロードします。
OS毎にダウンロードファイルが用意されているのでMac版をダウンロードします。ダウンロードしたdmgファイルをダブルクリックします。
この画面が表示されますので、unetbootin.appをダブルクリックして「UNetbootin」を起動します。
ダウンロード済の「Ubuntu」をインストールするので「Diskimage」にチェック。
「ISO」を選択。
デスクトップに移動した「ubuntu-ja-16.04-desktop-amd64.iso」を選択。
「Type」は「USB Drive」を選択。
「Drive」は先ほどメモった「disk10」を選択。
「OK」をクリック
USBフラッシュに「Ubuntu」がインストールされます。
この画面が表示されたらインストール成功です。「Exit」をクリックして終了します。これでUSBフラッシュに「Ubuntu」がインストールされました。
この段階でDCPデータをコピーするポータブルHDDをMacに接続しておいてください。この後の工程でHDDはフォーマットされて中身がすべて消去されますので、空のHDDを用意してください。
【Chapter 9:USBからUbuntuを起動する】
ここからは未知との遭遇になります。一度Macをシャットダウンし、キーボードの「option」キーを押しながら起動します。
ここからはMac OSの環境ではなくなり、画面キャプチャができなかったのでiPhoneの写真になります。見にくいですがご了承ください。
このような画面が表示されるので「EFI Boot」を選択します。なぜか「EFI Boot」が複数表示されるのですが、イエローのアイコンの「EFI Boot」を選択すると「Ubuntu」が起動するようです。
次の画面では必ず「Try Ubuntu without installing」を選んでキーボードの「Enter」キーを押します。これは絶対に間違えないでください! 間違えるとMacに「Ubuntu」がインストールされてしまい、Macではなくなってしまいます。
「Ubuntu」が起動すると、上のような画面になります。Macが見たこともない画面になってキーボードが使えなくなってしまって焦りますが、USBフラッシュから「Ubuntu」が起動しているだけなので、Mac本体には影響がありませんのでご安心ください。
【Chapter 10:ポータブルHDDをext3形式にフォーマットする】
最初に画面左に縦に並んでいるアイコンから「Ubuntu Software」をクリックします。
次に画面右上のキーボードのアイコン → 仮想キーボード → 半角英数字を選択。
マウスのクリックで入力する仮想キーボードを表示します。
検索ウインドウに「gparted」と入力します。入力している途中で画面が切り替わります。
「Gparted」はデフォルトでインストールされているらしく、上の画面が表示されるので、「GParted」をクリックして起動します。
「Gparted」が起動しました。
右上のプルダウンメニューから、フォーマットしたいHDDを容量で見つけます。今回は1TBのHDDです。
HDDが正しく選択されたら、右クリックして「アンマウント」を選択します。
アンマウントできたら同じく右クリックして「フォーマット」 → ext3 を選択します。
「ファイルシステム」が「ext3」になっていることを確認して、上の緑のチェックマークをクリックします。
「本当に保留中の操作を適用してもよろしいですか?」というメッセージが表示されますので、「適用」をクリックします。
フォーマットが開始されます。少し時間がかかります。
フォーマットが完了しました。「閉じる」をクリックして終了します。
【Chapter 11:MXFフォルダをHDDにコピーする】
ここまでくれば、もう先が見えてきました。あと少しです。
デスクトップで「右クリック」 → 「端末を開く」を選択します。
Macでいうところのターミナルが起動します。
sudo nautilus
と仮想キーボードで入力して「Enter」をクリックします。
そうするとスーパーユーザー権限でウインドウが開きます。
DCPデータが入った「MXFフォルダ」を表示させた後、ウインドウの左側のHDD一覧からext3形式にフォーマットしたHDDを右クリックして「新しいウインドウで開く」をクリックします。今回なぜか文字化けしてしまいました。
MXFフォルダをドラッグ・アンド・ドロップでコピーします。
コピーが終わったら、HDDを取り外します。
最後に右上の歯車のアイコンから「シャットダウン」を選択してMacをシャットダウンして終了です。シャットダウン後は普通に起動すればMacが立ち上がります。
この後は、HDDを持ってシアターに行き、インジェストとテスト上映をしてもらいます。
お疲れ様でした!